フラップの日本語名称は
「揚力増加装置」
と云います。
フラップを出すと、主翼の下面の抵抗が増え、より下向きに風が流れる様になります。
主翼の下を通る空気がより下向きに流れ易くなる=機首を上げ易くなる、と云うことなので、旋回し易くなるワケです。
主翼の空気抵抗が増えるので当然速度も低下しますが、こういうスピードブレーキ的な役割は二次的な役割でしかありません。
速度を遅くすれば曲がりやすくなり、速いときは曲がりにくい、と云うのは皆さん普段飛んでいるときに身を以て実感してらっしゃるかと思いますが、フラップを使うことに依って
スロットルを絞って減速する代わりに、推進力(パワー)を維持したまま旋回率を上げる
ことが出来ます。
速度が遅ければ小回りし易くなりますが限度と云うものは当然あって、機体が失速
(主翼が揚力を生まなくなり、めいっぱい操縦桿を引いても旋回する力が働いていない状態)
するほどの低速だとフラップを出して揚力を増加させない限り旋回を継続することが出来ません。
しかしこのフラップも万能と云うわけではなく、
1)速度が速いと出せない
※空気抵抗が大きすぎて出せない
2)必要以上に出すと旋回を継続出来なくなる
※スピードブレーキの役割を果たしすぎて速度が落ちすぎる
と云う欠点がありますので、出せば出すほどよく回る、と云う認識ではなく使いどころをしっかりと見極めて出したりしまったりして戦う必要があります。
場合に依っては、フラップが出せない速度域であればスロットルを調節しながら旋回率を調整してやる必要がある局面もあるわけです。
フラップの段数は少ない機体で1段、多い機体で6段と段数に違いがありますが、これは多ければ多いほど有利、と云うわけでなく多い機体ほどフラップ操作が難しい、と考えて頂くと良いでしょう。
一例として、旋回戦に優れていると定評のあったSpitfire Mk.Iaには1段しかありませんが一撃離脱を得意とした艦載機のF4Uには5〜6段のフラップがあります。
これはF4Uの方が旋回性能が優れていると云うわけではなく、Spitfireはフラップを使わずとも大きな主翼で生み出す揚力に依り抜群の旋回性能を持っているのでフラップを使用する必要が無く、装備されていないだけなのです。
結論として、フラップは中〜低速域でしか出せず、出せば出すほど旋回率は上がりますが必ず速度が低下します。
落ちた速度を手っ取り早く稼ぎ直すには降下することですが、どんどん降下して地表すれすれまで行ってしまうと、必ず失速状態に陥ります。
失速中の旋回は気持ち的にはものすごく回った気分になりますが実際はふらふらよたよたと墜落寸前の速度で旋回しているに過ぎないので、より旋回性能に勝る機体やエネルギーを維持している機体にとってはただの低速の餌にしかなりません。
Last update:2003/11/09
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